本当の自分
本当の自分
ねえ、金田君。
「何だ?」
私って何だと思う?
「あゆみは、あゆみだろう ?」
不思議そうな顔をするクラスメート。
唯一私の秘密を知っている友達。
貴方の前だと、私はとっても素直になれる。
あのね、今、学校に来ている私って、ほんとうの、本当の私じゃ無いって知っているでしょう?
「ああ、今日は具合良いのか ? 」
うん。とても調子いいのよ。
心配してくれるのが嬉しい。
「それでどうしたんだ ? 」
だからね、本当の私は、病院にずーっと入院してるでしょ?
でも、 陽神(
ようしん) の術で体を造って学校に来ている。
偽者の身体で、みんなと居る。
私は、金田君以外のみんなにその事を黙ってる。
つまり、嘘ついてる。 それでも、ぬ〜べ〜クラスの仲間って言えるのかな?
そう言ったら、怖い顔で睨まれた。
ごめん、でも、心配なの。
「今のあゆみは、学校に来ているあゆみは、あゆみのホントの心で作ったものだろう?だったら本物だ」
ぶっきらぼうな言葉。だけど、心が篭った言葉。
ありがとう。
「それにさ、術を教えたのはぬ〜べ〜だぜ。あゆみは、はじめから俺達の仲間なんだよ。いや、もしかしたら、先輩かもしれねーよな、一番古株だし」
あはは、ひどい、まるで留年してるみたい。
私の前で、業とおどけて見せてくれる優しい友達。
うん、心配すること無かったね。
「だから、あゆみは、早く身体を治して、今よりもっと本当のあゆみになって、学校にこいよ」
そう言って照れて真っ赤になる。
目の奥が熱い、嬉しくて、ものすごく嬉しくて。
金田君が本当の私を知っててくれる。
だから私は、このままで本当の私なんだ。
そう思えた。
「ん?わっ!?あゆみ、おまえ何泣いてんだよ」
だって、嬉しいんだもん。
「まるで、俺が泣かしたみてーじゃんか」
泣かしたんだよ、とっても優しいから。
「なんだよ、それ」
ありがとう…
「……泣きすぎると、身体溶けるぞ・…」
うん…もうすこし…
昼休みの教室。
二人だけ残った、生徒の会話をふと耳にして、ぬ〜べ〜先生はそっと微笑った。
了